シャモニクラブ 山行記録

ツエルマット・シャモニ(個人山行)

     

日程:2012年8月5日〜8月14日  参加者:冨田、長嶌(記録、写真)

 スイス行きを決めてから、色々と情報収集をしていたが、今年のマッターホルンは雪が多く、7月下旬時点でガイド登山もいつ再開されるか未定と言う状況だった。雲の切れ間から見えるマッターホルンは、やはり真っ白だった。ツェルマットで合流した、冨田さんとアルパインセンターで翌日以降の天気を確認する。ヘルンリ小屋の予約方法を聞くと直接電話をするようにと電話番号をもらい、翌日から2泊の予約を入れる。

しかし出発のその日の朝も、マッターホルンはまだ雪で白く、1日位では雪は解けそうにもない。冨田さんと相談の結果、翌日の晴れ予報に期待し、予定を1日ずらす事にした。そして急遽1日空いた為、ブライトホルンへ行く事にする。
ロープウェーでマッターホルングレッチャーパラダイス駅(旧クラインマッターホルン駅)まで上がり、アイゼンを付けると いよいよ登山開始。初めて踏みしめるアルプスの雪と360度の展望を楽しみながら歩き始める。稜線に出るとやはり風が強く、初めて寒さを感じる。そして、頭がぼーっとしてきたので高度を確認すると、4000mを越えていた。

 初めて高度障害を体験する。一呼吸一呼吸、大きく息を吐きながら最後の斜面を登りを終えるともう高い所はなく、頂上だった。標高4164m! 明日行く予定のマッターホルンも見える。午後2時になっていたので、早々に下山し1時間40分程でマッターホルングレッチャーパラダイス駅へ戻る。


8/6 ブライトホルン頂上(後方にMatterhorn)同(クラインポルックス方面)

8/6 ブライトホルン登頂前日のマッターホルン

 そして翌日。いよいよ、マッターホルンへ登る当日。天気は快晴。シュヴァルツゼーからのんびり、途中でランチを取ったりしながら2時間弱でヘルンリ小屋へ到着。小屋にはマッターホルンへ登る人、下りてきた人、その他ハイカーなどで賑やかだった。小屋で宿泊手続きをしたあと、取りつきまで下見に行く。夕飯はマッシュポテト、ビーフシチュー、デザート。

 8時頃に就寝し、翌日は4時起床。食堂にはガイドパーティやガイドレスパーティ、マッターホルンに登る全員が集まっていた。パン、チーズに紅茶の朝食を慌ただしく取り、5時30分過ぎに出発する。取り付きには固定ロープがあり片手でロープを掴み、ホールドを探しながら登る。取り付きを過ぎ、踏み後を辿るが、正規ルートの目印の小さなケルンを見落とし 1つ先行しているイタリア人パーティの後を付いて行った所ルートミスをしている事が判明。

先を急ぎたいがなかなか道を譲ってくれず、ようやくイタリア人パーティを追い抜き正規ルートに戻れたが、ソルベイ小屋に着くのが大分遅れてしまった。雪がかなり残っていて、ソルベイ小屋でアイゼンを装着。少し休憩し、小屋を出発する。リッジは急峻な岩場がどこまでも続いている。

そこから上部モズレイスラブを登り、急な氷面をアイスクライミングのようにアイゼンを蹴りこみ、ピッケルを使っての登攀になる。雪のリッジを登り、頂上まで後200m弱と言う所で既に5時半。雪の状態とその後の所要時間を考える、とソルベイ小屋でビバークするとしても暗くなって危険と判断し、残念ながらも4300m程の地点で下山を決める。この時、冨田さんが「頂上まであと少しだが、どうしようか」と私の意向を尋ねてくれたが、私としては、ここまで来られた事でもう十分だった。また、残念と言うよりは これだけの時間、岩に取り付いていられた事で自分自身の目的は十分達成できたと思っていた。そして早く安全に降りたいと思った。何度かの懸垂下降、ロープにテンションをかけてのロワーダウンを繰り返しながらソルベイ小屋に降り立つ。ソルベイ小屋は毛布が設置されてあり、広さも十分で快適だった。ただ、毛布2枚にくるまっても寒く、初めてレスキューシートを使った。翌日は6時前にソルベイ小屋を出発。小屋の下もまだ雪があるので、アイゼンを付けクライムダウン。懸垂を数回行い午前11時40分頃、ヘルンリ小屋へ着く。谷川岳一ノ倉南稜を100回も登ったような充実感と、何年分かの様々な登山技術を、わずか数日で体感できました。


8/8 ヘルンリ小屋へのアプローチ8/9 イタリアパーティを追い抜く

8/9 最終到達点下山準備

ソルベイ小屋への懸垂下降ソルベイ小屋上部の岩場

ソルベイ小屋8/10 ヘルンリ小屋に向けて下山

 翌日ツェルマットからシャモニへ移動し、コスミックバットレスを登る。始めて経験する岩質とスケールに圧倒された。その後は天気が安定せず、軽いトレッキングをしたり、ガイド祭りを見に行ったり、シャモニの町を満喫する事が出来た。


8/13 シャモニ ミディ頂上駅コスミックバットレス

コスミックバットレス

オーバーハングを越える

感想
ツェルマットもシャモニも、そのスケールの大きさに圧倒されっぱなしでした。どこに行っても居心地の良い事この上なかったです。比較的天気にも恵まれ、目的のマッターホルンも登れたし、シャモニの岩にも触れられたし、ガイド祭りも見られたし、山だけではなく電車もロープウェーも食事も、出会った人も全て脳裏に焼き付いています。
去年、思いつきのように「マッターホルンに登る」と言いましたが夢は見るものではなく、実現させるものなんだな・・、と実感しました。
また、せっかくの休暇を割いてわざわざツェルマットまで来て頂き、お付き合い頂いた冨田さんには本当に感謝しております。この場をお借りして、御礼申し上げます。

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