シャモニクラブ 山行記録伊豆・海金剛スーパーレイン登攀記録日時:2013年3月18日(月) 前回の課題をクリアすべく向かった海金剛だが夜半から吹き荒れる強風の為、起床が遅れキャンプ場出発は7時30分、アプローチ入り口の標識はなくなっており掘立小屋から5〜60m先の踏み跡を右にのぼり40分ほどで取りつき着。8時30分長嶌トップで1ピッチ目の凹角を(5.7)を登りだす。 ルート中一番楽なピッチを順調に25mほどで灌木ビレー、冨田はザックを背負ってフォロー、2ピッチ目そのまま冨田トップで凹角を直上、クラックにナッツを決め右に5mほどホールドの乏しいスラブをトラバースし灌木のテラスへ(このピッチが一番怖い!)と書かれた、記録が多い。 3ピッチ目以後冨田トップ、ハングしたクラックを登り左へ回り込んで右のフェースを登り灌木のテラスでビレー、後続の長嶌は指を切りながらフォロー、血の止まらない指の手当にザックから救急セットを取り出しカットバンで手当。 4ピッチ目、 前回 笹川がカムとアブミのアメリカンエイドでリードした右上クラックに向かう。ビレイポイント以外は一切支点が無いのでカムのサイズが合わず、四苦八苦!、ステミングでじわじわ登りカムを3個セットしたところでクラックから伸びる細いバンド状フエースに立ちこむ際どいバランスで、あと一歩というところでバランスを崩し墜落!効きの悪い最後のフレンズが抜け4〜5m落ちた。幸い怪我もなく、もう一度トライ!今度はOK! 更にクラックを登りテラスでビレー、眼下の真っ青な海と岩に砕ける白い波頭が美しい。続く先人クラックは城塞と呼ばれる頂上岩壁まで、覆いかぶさる様に迫ってくる。
5ピッチ目垂壁の中、一本の道のように伸びたクラックを慎重に登りハング気味のところを直上するのだが合うカムがなく落ちればやばいのでハング下を腐ったボルトの本体にスリングでタイオフし左から回り込みフェイスを登って城塞下でビレー。長嶌が登ってきて「12時になりました!と、暗に降りましょう!」と、言ってくるが無視! 強風の吹き荒れる中とはいえ、青空も時折見え、ここで下れば一生後悔するぞ!と、思い城塞右端に取りつく。最後までカムのサイズが合わずてこずる。4〜5mでクラックから右の易しいスラブからフェースを左上しピッチを切る。長嶌も苦戦しているのかロープにテンションがかかったり、グイグイ引いたりするので全く声が聞こえない中ロープを少しずつ緩めたり張ったりを繰り返す。やがてヘルメットが見え「ロープが風にあおられ岩にひっかかった為」と理解した。 最終ピッチ7ピッチ目、見覚えのある右のクラックを登る。前回は笹川のワイドカムに助けられたが、そんなデカイの持ってない!少し下の細くなったクラックにカムを効かせテープアブミ1本をつかってガバホールドを掴みクリアー。易しいフェースを登って終了点へ。 長嶌を迎え時計を見ると13時30分。休む間もなく下降開始!ロープが強風にあおられ岩角やブッシュに引っ掛かり易いので20m位でピッチを切るため余ったロープの処理に手間どる。15時30分取りつき点に戻り登攀終了。 久しぶりのクラッククライミングで登り方も自信がもてず、カム類も何とかなるだろう、と、いつもの悪い癖で適当に持って行ったが大き目のサイズが不足した。また、登ることがあれば、クラックの上手なパートナーにリードしてもらいクラックをもっと楽しみたい。一緒に登ってくれた長嶌さんに感謝!最後に海辺の擬灰岩のクラックは表面が削れてカムが外れやすいので要注意!(冨田 榮吉)
【感想】 1ピッチ目は「簡単」と言われ、とりあえずリードしたがすんなり登れたのは、このピッチのみ。2ピッチ目では指を切ってしまい、「この指で上まで行けるのか?」とたんに弱気になる。しかし、指の事など気にする余裕もなく、縦に走るクラックが目の前に現れ、ハンドジャムが効いた感触はわずか数回。 6P目では強風のため、途中でロープが岩にひっかかり、進むにも後退するにもロープが張った状態で身動きが取れなくなってしまった。西からの強い風と広い空間の中で声も届かず海に切れ落ちた狭いテラスで、脱出するにはどうしたものかと色々考えた。やっとのこと、ロープが伸びてきた時には本当にホッとした。 最終ピッチ、傾斜の緩くなったスラブを登ると終了点へ!周りは海、飛ばされてしまいそうな強風。前後に他のパーティは無く、今まで味わった事のない充実感だった。途中、「ここで下りてもいいかも」と弱気になった時もあったが上まで抜ける事が出来て、本当に良かったと思う。また、多様なサイズのクラック、濡れて滑るフェース、海岸から突き上げた岩場を、十分とは言えないギアを駆使しリードしている冨田さんを見ていて、「本当にすごい!」と思った。
「再びここへ来る事はあるのだろうか?」登っている間は次の事は全く考えられなかったが、取り付きに戻り、振り返ってみると、今回残った沢山の課題をそのままにはしておけないので、またいつか訪れてみたいと思いが変わっていた。
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